判例

S33.02.21 第二小法廷・判決 昭和32(オ)401 詐害行為取消請求(第12巻2号341頁)

判示事項:

債権発生前の債務者の行為と民法第四二四条。

要旨:

債務者の行為を詐害行為として民法第四二四条を適用するには、その行為が取消権を行使する債務者の債権発生後になされたことが必要である。

主    文

     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         

理    由

 論旨は本件建物の売買につき、登記原因成立の日を昭和二九年八月一〇日として登記されているから、登記の対抗力によつてこれと異る日時の主張認定は許されないと主張するのである。
 しかし、登記はこれによつていわゆる物権変動そのものにつき対抗力を生ずるものであつて、登記された登記原因の日附にまで対抗力を生ずるものでないのはもとより、登記と異る登記原因の日時の主張認定を妨げるものでもなく、所論は独自の見解に出でたものにすぎないのみならず、仮に売買の日時を八月一〇日としてみても、その売買が上告人の債権取得以前の行為に属することに変りはなく、債務者の行為が債権者の債権を害するものとして民法四二四条の適用ありとするには、その行為が取消権を行使する債権者の債権発生の後であることが必要なのであるから(大正六年一〇月三〇日大審院判決、民録二三輯一六二四頁参照)、右売買が詐害行為として取消の目的とならない点に於て変りはないのであり、詐害行為取消の請求を排斥した原判決の結論になんら消長を来す筋合のものでないから、所論は採用に由ないものである。引用の判例は適切でない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一