判例
S56.04.08 第二小法廷・決定 昭和54(あ)1613 道路交通法違反、有印私文書偽造、同行使(第35巻3号57頁)
判示事項:
交通反則切符中の供述書をあらかじめ承諾を得て他人名義で作成した場合と私文書偽造罪の成否
要旨:
交通反則切符中の供述書を他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立する。
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人佐々木実の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
なお、交通事件原票中の供述書は、その文書の性質上、作成名義人以外の者がこれを作成することは法令上許されないものであつて、右供述書他人の名義で作成した場合は、あらかじめその他人の承諾を得ていたとしても、私文書偽造罪が成立すると解すべきであるから、これと同趣旨の原審の判断は相当である。
よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
昭和五六年四月八日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 塚 本 重 頼
裁判官 栗 本 一 夫
裁判官 木 下 忠 良
裁判官 鹽 野 宜 慶
裁判官 宮 ア 梧 一