最判昭46年6月17日
行為者の認識していない被害者の隠れた病変の存在により、行為者の実行行為とあいまって初めて結果が発生した場合でも因果関係は否定されないとした。この判例では特に検討していないが因果関係を肯定した後、更に結果的加重犯における重い結果についての過失の要否が問題になりそうである。もっとも、判例は重い結果についての過失不要とするので結論には影響しない。
最判昭32年2月26
結果的加重犯につき重い結果の発生につき行為者の過失を不要とした
弥彦神社餅まき事件
(最判昭42年5月25日)
群集の参集により生じた転倒・窒息等による死亡事故につき行事主催者が業務上過失致死罪に問われた事例。過失犯の要件を丁寧に検討している。
日本アエロジル事件(最判昭63年10月27日
監督過失についての指導的判例
川治プリンスホテル事件(最判平2年11月16日)
管理過失と安全体制確立義務の内容
最判昭30.10.14
権利行使の手段として社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を逸脱した手段を用いた場合は、違法性は阻却されないとした。
丸正事件(最判昭51年3月23日)
刑事弁護人の弁護活動が正当業務行為として認められる限界
外務省機密漏.洩事件(最判昭53年5月31日)
新聞記者の取材活動が正当業務行為として認められる限界
山田鋼業事件(最判昭23年11月15日)
正当な労働争議行為と認められるための要件
全農林警職法事件(最判昭48年4月25日)
争議行為は労働法上認められる正当な目的(労働者の経済的地位の向上)にでたものに限り正当性が認められる。政治的目的のための労働争議行為は正当なものとは認められない
最判昭33.11.21
偽装心中の事例。被害者の承諾の存在を否定し殺人罪を認定。
最判昭26.3.9
侵害の急迫性の判断
最判昭46.11.16
正当防衛の成立には防衛の意思が必要であると明示した最初の判例。
最決昭52.7.21
単に予期された侵害を避けなかったというにとどまらず、その機会を利用して積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは、侵害の急迫性の要件を満たさない、とした。
最決昭57.5.26
使用者側が団体交渉に応じないという不作為をもって「急迫不正の侵害」があるとはいえないとされた。
最決昭58.9.13
心神喪失・心身耗弱の概念は、いずれも精神医学上の概念ではなく法律上の概念であるから、最終的には専ら裁判所が決するべきものである。
最決昭59.7.3
鑑定結果の採否は裁判所の合理的裁量に属するから、鑑定の結論を採用せず、裁判所が独自の立場から他の証拠によって異なった結論を導き出してもよい。
最大判昭26.1.17
過失犯の場合、責任無能力状態に陥らないようにすべき結果回避義務を原因行為時点に認めれば行為者に帰責可能だから、原因において自由な行為の理論を適用する必要はほとんどない。
最決昭42.2.27
限定責任能力の状態にある場合にも原因において自由な行為の理論の適用を認めた。
羽田空港ロビーデモ事件(最判昭53年6月29日)
当時の判例である違法性の意識不要説に立たずに原判決を破棄しているのは、違法性の意識不要説の立場を維持することにつき検討の余地を示したものと解されている(原審は、違法性の意識の可能性必要説の立場に立つ)。
百円札模造事件決定(最判昭62年7月16日)
明言はしていないが、違法性の意識の可能性必要説に対しかなり好意的な態度を示している。
最判昭32.10.18
刑法38条3項ただし書の解釈
最判昭26.8.17
鑑札を付けていない犬は直ちに無主犬とみなされるものと誤解した被告人につき、事実の錯誤があったとして故意を否定した。
最判平元.7.18
県議を通じて公衆浴場営業許可変更届が受理された旨の連絡を受けた被告人につき、無許可営業の故意は認められないとして、被告人に無罪を言い渡した。
勘違い騎士道事件(最判昭62年3月26日)
誤想過剰防衛の事例。
最決昭45.7.28
ダンプカーに引きずり込む行為の時点で強姦に至る客観的な危険性が明らかに認められるとして実行の着手を認めた。
最決昭32.9.10
驚愕恐怖から犯意を抑圧され中止した場合に中止犯の成立が否定された。
最大判29.1.20
予備罪に中止犯規定の準用を否定した。
最判昭43.12.24
対向関係にある行為者のうち、一方の行為者についてだけ処罰規定がある場合に、他方の行為者の行為が構成要件上当然に予想される共犯行為である限り、任意的共犯の規定の適用はない、とした。
練馬事件
共謀共同正犯を肯定した。
最判昭23.12.14
共同正犯の成立要件として、事前共謀である必要はなく、現場共謀があれば足りる。
最判昭23.11.30
共同正犯の成立に必要な共謀は、必ずしも明示的な方法で行われる必要はなく、黙示的な意思の合致がなされることによって形成されてもよい。
最判昭24.7.12
共同正犯が成立する場合には、共同正犯者中のいずれかの者の行為によって結果が生じたことが明らかであれば、全員が正犯としての責任を免れない。
最判平4.6.5
共同正犯が成立する場合における過剰防衛の成否は、共同正犯者の各人につきそれぞれの要件を満たすかどうかを検討して決するべきである。